宝珠山理歩

宝珠山理歩

角田 今日は遠くから来ていただいてありがとうございます。とは言え浦和がご実家なんですよね。
宝珠山 はい。さいたま市ですが以前は浦和でしたね。
角田 ところで大変珍しい名字ですね。私も今まで生きてきて初めてお目にかかるお名前です。「宝珠」は「ほうじゅ」だから「ほうじゅやま」さんと言うのかな。
宝珠山 「ほうしゅやま」と言います。
角田 濁らないんですね。下のお名前はすぐ分かります「りほ」さんですね(笑)。
宝珠山 はい。
角田 「宝珠山」さんというお名前はこのあたりで見かけたことはないんですが、そもそもどの辺に多いお名前なんですか。
宝珠山 九州の福岡や大分付近には数百人いると聞いています。祖父が九州で父の代からはこちらです。
角田 今は慶應義塾大学の大学院2年生ということですよね。ところで大学院では何を専攻されていますか。
宝珠山 理工学部で専攻が制御工学をやっています。
角田 何かを制御するんだ(笑)。
宝珠山 そうですね(笑)、その通りです。はい(笑)。
角田 だとするとコンピュータは必須ですね。
宝珠山 コンピューター上でシュミレーションみたいな事をしますね。
角田 完全に理工系だ。ところで慶應義塾には大学から入学されたんですか。
宝珠山 いえ、高校から入りました。女子校で慶應義塾女子っていうのがあります。
角田 埼玉県の志木市にあるのは男子校ですか。
宝珠山 そうですね。基本的には男子校ばかりで女子が入れるところは少ないんです。
角田 女子校はどこにあったんですか。
宝珠山 三田です。
角田 三田っていうと慶應義塾大学のあるところですね。
宝珠山 はい。三田キャンパスのふもとにあります(笑)。
角田 その当時は浦和にお住まいだったんですね。
宝珠山 はい。いま浦和にあるのは祖母の家なんです。
角田 じゃ、ご両親は?
宝珠山 神奈川に引っ越しました。父も仕事の場所が神奈川の方が便利だったものですから。
角田 なるほど、仕事の都合が良かったんですね。でも本音は娘を独りで住まわせるのは心配だったからかも。ところでなぜ制御工学に興味を持ったんですか。
宝珠山 もともと数学や理系の科目が好きでした。で、将来は経済学部で何かをやりたいというよりは理工学部でこれが専門というものを身につけたかったんです。
角田 なるほど、とてもしっかりした考え方ですね。ところで小学校や中学校は浦和ですよね?
宝珠山 はい、そうです。
角田 公立ですか?
宝珠山 埼玉大学付属です。
角田 埼大付属から慶応なんて、どこから見ても秀才。
宝珠山 そんなことないですよ(笑)。
角田 いや、そんなことある(笑)。さて、そろそろメインテーマにいきましょうか。本誌で書壇や書の楽しみを担当されている書家の鈴木不倒先生から聞いた話なんですが、今回、全国で100人くらいが選ばれた学生が中国政府から招待されて行ってきたそうですね。その話をお聞きしようと思います。
宝珠山 大学生を中国に招待してくれるというもので、日本に限らず世界中の大学生が行きました。中国政府が青年の世界大会を開くという趣旨でした。それに当たって行くことが出来たんです。日中友好協会というところがおこなっているものでした。
角田 それは書道をやっている人の中から選んだと言うことではないんですよね。
宝珠山 はい。書道ということではないですね。その100人はいろんな方がいました。けっこうグローバルが好きな方が多かったなって思います。
角田 日本人だけで100人なんですね。
宝珠山 はい。
角田 日本人以外も行ってるということはみんな一緒というわけではないのかな。
宝珠山 はい、バラバラです。
角田 基本的に中国に行って何をしてきたというか、どんな事ををしてきたんですか。
宝珠山 和平大会というものに参加することと、北京外国語大学っていうとても優秀な大学があるんですが、そこの日本語学科の学生と交流するということ。そしてついでに観光させて貰うというのもありました。
角田 基本は学生交流ですね。ついでに観光ね(笑)。
宝珠山 でも私が行った時期は大変な時でした。
角田 あっ、大雨で洪水などが起こっていた時期ですね。これは日本でもニュースで何回も報道されていました。
宝珠山 そうなんですよ。確かに凄くて日程変更などもありました。
角田 行った先ではホームステイですか。
宝珠山 いえ、普通にグレードの高いシティホテルに泊まらせていただきました。
角田 何日間の日程でしたか。
宝珠山 6泊7日です。
角田 けっこう長いですね。様々なスケジュールがあったんでしょうが、あの歴史的に見ても例がないほどの悪天候の中でスケジュールはこなせましたか。
宝珠山 ほとんど出来ませんでした(笑)。広東省に行く予定だったんですよ。そこにあるとても大きい工場に行くのを楽しみにしていたんですがダメになりました。北京では郊外の街に行く予定もダメになりました。
角田 うーん、そうですよね。ひどい天候でしたからね。
宝珠山 それで北京周辺で行けるところにチョコチョコと案内してくれるということになりました。
角田 1週間いたら色々な所に行けたはずですね。残念でしたね。北京って本来はそんなに雨の降る所ではないんですよね。
宝珠山 そうなんですよ。
角田 ところで中国ってどうですか。私などは行ったこともないんですが中国に対するイメージって怖い国、非常に反日感情の強い国。すぐにスパイにされちゃうんじゃないかって思ったりして必ずしも良いイメージは持ってないんです。先日も何処かの会社の会社員がスパイ容疑で拘束されたばかりだし…。あれ、本当にスパイなのかなって疑いますよ。
宝珠山 本当に分からないですよね。私も個人で行くのはやっぱり怖いなっていう印象は正直あまり変わっていないです。でも今回は本当に守られた環境で行ってきましたっていう状況でした。
角田 そうなんでしょうね。それはよく分かりますね。ところで北京は大都市なんでしょうね。
宝珠山 大都市だと思います。中国全土なのかもしれないですが、すべてにおいて規模が大きいと感じました。これは行ってこそ体感できるものだなって思います。
角田 北京のような大都市では道路も広いんでしょう? 10車線もあるとか。
宝珠山 広いですね。場所によって違うんでしょうが…。自転車がうらやましいなって思いますね。自転車のためだけに1車線あるんです。自転車が車におびえることなく悠々と走れるのはいいですね。
角田 昔から中国という国に興味はありましたか。そうだ、あなたは書道をやってらしたのですから中国に関心がないわけはないか(笑)。何歳くらいから書道をやってましたか。
宝珠山 小学校1年生なんですが、不倒先生の所に行きはじめたのは5年生の時ですね。
角田 不倒先生の所に行くようになったきっかけは?
宝珠山 それまでの先生は公民館でやってましたが、先生が高齢になって辞めることになりました。そこでお友達が通っている不倒先生のところに見学にいったのがきっかけです。
角田 1年生の時はたぶん親に言われて習い事に行ったということだったんでしょうが、長く続いているということはどこかで魅力を感じたとか好きになったというようなことがあったんでしょうね。
宝珠山 学校の書道展で賞がとれたっていうのが最初のモチベーションだったのかもしれません。それが嬉しかったとか楽しかったですね。
角田 言ってみれば単純な理由ですけど、子どもにとっては大きな理由ですよね。でも書の世界って入っていくほどに奥が深いじゃないですか。
宝珠山 はい、深いですね。
角田 文字の種類だけでなく中国の古典などに入っていくと、その1つ1つをモノにしていく楽しみもあるのかなって想像しています。
宝珠山 先生のところでは専門でやっている方もいらっしゃいます。そういう方を見ていると私の場合はやっぱり書いているのが楽しいのかなって思います。
角田 専門でやっていなくても、ずいぶん長く続けていますよね。師範の資格をとるとか、そういうことはあまり考えていない?
宝珠山 続けているからにはそのうちっていうか、目標として持っているというのはあると思います。
角田 今回、中国に行くというきっかけは書道をやっていたからということですか。
宝珠山 こういうのがあるよって不倒先生から聞いたのは2年前でした。先生は日中文化交流会に所属されていて、そちらの推薦枠で推薦して下さるという話を何回か頂いていたんですが、日程があわなかったり、定員オーバーでだめだったりしました。
角田 それでどうしました?
宝珠山 今年は学生最後なのでどうしても行きたくて調べたら同じ協会の募集を見つけたんです。「あっ、自分で応募できるんだ」って。
角田 自分で応募できたんですね。
宝珠山 はい。それで募集要項を見たら推薦状が必要だったみたいです。不倒先生もその協会員だったはずだと思って、先生に推薦状を書いて頂きました。
角田 向こうでは移動はバスでしょう。他の人とたちとお話しできましたか。
宝珠山 はい出来ました。仲間に恵まれたなって、とても楽しかったです。
角田 こういうのって男性よりも女性の方が多いのかな。
宝珠山 そうですね。圧倒的に女子が多かったです。文化交流が好きなのって女子の方が多いかもしれないですね。
角田 書道の世界もそんな感じですね。さて、将来のことも伺いましょうか。これから大学院を卒業した後はどうしますか。どこかに就職ですか。
宝珠山 はい、就職はもう決まっています。ですからまずは社会人として働きますが、私は理系の学生でありながら文化的なことも好きで、書道もそうなんですが博物館なども好きで、わざわざ文学部に通って学芸員課程を受講しました。
角田 文学部にも通っていたの?
宝珠山 そうじゃないんですが、慶応内で文学部の講義を取ることも出来るので講義を全部受講しました。
角田 それは凄いですね。それで学芸員の資格は取れたんですか?
宝珠山 取っちゃいました(笑)。でもやりたいことと言えば理系のITのことも進めたいんです。その2つの分野のギャップがすごい(笑)。
角田 なるほど、では将来どうしましょう。
宝珠山 文化的分野の技術の進んでない具合っていうのに衝撃を受けることが多いんです(笑)。理系と文系の両方を融合させて、文系の効率の悪さなどをITで改善できればいいなと思うんです。そんなことを将来の最終的目標としては考えています。
角田 素晴らしいですね。まだお若いのにしっかりとした目標をお持ちなんですね。ぜひ頑張って下さい。ストテキストテキストテキストテキストテキスト

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